お酢ダイエット

「運動してもなかなか痩せない~」
「食べて痩せられるものはないの?」
といった方におススメのダイエット法です。
 
(⚠研究の世界でも、万人に当てはまるダイエット法は分かっていません。「痩せる可能性がある」とまでしか言い切れません。情報を鵜呑みにしすぎない姿勢を身に着けていただきたいと願います。そして、新しいダイエット法を取り入れる場合、自分の体と相談しながら少しずつ試していきましょう。)
 
 
 
■ お酢ダイエットについて、ネット上の情報では
 
・肥満予防、脂肪の減少
・血中コレステロールの減少
・食欲の促進
                  などの効果があるという内容を目にします。
 

 
 
 
 
■ これらの効果は科学的にどうなのか?
ここでは、お酢が本当に効くのか?なぜ効くのか? 科学的根拠に基づいた情報・メカニズムを分かりやすくお伝えします。
 
上述した3点について 結論からいうと、以下の可能性が高い考えられます。
① 肥満予防、脂肪の減少→◎ 効果あり
②血中コレステロールの減少→◎ 効果あり
③食欲の促進→×(むしろ食欲を抑える) 
 
以下、その科学的根拠について 解説していきます。
 
 
 
 
■ お酢の成分とは?
 
お酢の主成分は「酢酸」という物質です。
 
お酢による様々な効果は、この酢酸の作用によるものと考えてよさそうです。
 
エネルギーが足りていない空腹時には、脂肪を使って酢酸が産生されます(Yamashita.2016)。そして全身のエネルギーになります。 これは、巷で噂のケトン体と非常によく似ています。
 
また、酢酸は腸内細菌の分野でも注目されています。 腸内細菌が発酵する酢酸は、腸内のエネルギーになるだけでなく、 腸から取り込まれて血流を流れ、脳の機能を活性化させます。‘‘脳腸相関”といわれています。
最近では、脳だけでなく、骨格筋や脂肪組織に対しても酢酸が作用しているという考えが広まっています(Canfora.2015)。
 
重要なことですが、 摂取した酢酸も全身の組織に取り込まれると考えられています。 (摂取した食べ物は胃腸で分解され、基本的には最初に肝臓を通ります。そのほとんどが肝臓で処理されてしまうことを‘‘初回通過効果’’と呼びます。しかし、酢酸は肝臓で処理されにくいため(Bolemen.2009)、わりと全身にも酢酸が届くと考えられます。)
 
 

 ■ どうして酢酸が効くの?

しかし、「酢酸が全身に運ばれることは分かったけど、なんで酢酸で痩せられるの?」
と思った方もいらっしゃると思います。

実は、酢酸の本当のすごさ、それは代謝のされ方にあります!! (Fig.2)

岡山県立大学の山下教授らによると...

酢酸は、様々な組織にに運ばれ、各組織の細胞に取り込まれた後、
酢酸→アセチルCoA※1
に変換されます(yamashita,2016)。

※1 アセチルCoAとは体を動かすエネルギー源となる物質です。
  (エネルギー過剰時は脂肪になりますが...)

この「酢酸→アセチルCoA」の過程でAMPという物質が生成されます。
このAMPは、エネルギー状態を監視するAMPKという物質を活性化させます。
そして、AMPKは「脂肪を使ってエネルギーを作れ!」という指令を周りに伝えます。
そして脂肪が消費されるという流れになります。

筋肉を動かすにはATPを使います。糖も脂肪もタンパク質も、エネルギーとして使うためには最終的にATPという形になります。
運動時には
ATP→AMP+エネルギー
という反応を亢進し、AMPとエネルギーがたくさん産生されます。
その結果、AMPが増えてAMPKが活性化され、脂肪も多く使われ、痩せます。

しかし、酢酸であれば、摂取するだけでAMPを作れるのです!

つまり、酢酸を食べれば運動した場合と似た状況が作れるのです!!!

 

 

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Fig.2 酢酸は代謝され、細胞内のAMPKを活性化させる

 

 

 

 

■ どのくらい飲めばいいの?

Kondo et al.(2009)によると...

日本人の肥満気味(BMI 25-30)の方を対象として、飲ませるドリンクの種類にしたがって以下の3つのグループに分けました。
プラセボ(お酢を含まないドリンク)を500ml
・15mlの酢を含むドリンクを500ml
・30milの酢を含むドリンクを500ml
これを12週間の期間、毎日飲ませたところFig.3のような結果になりました。

これは12週間に、体脂肪の面積がどれほど変化したかを表したグラフです。
15mlの量でも十分に脂肪面積を減らせたことが分かります。
逆に言うと、お酢の多量摂取で、さらなる効果は期待できないと考えられます。
(棒グラフがありませんが、皮下脂肪のプラセボは、ほぼ変化なしということです。)

 

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Fig.3 Kondo et al.より筆者作成

 

 

この研究では、脂肪面積の減少に加えて、
血中コレステロール中性脂肪の減少も確認されました。

つまり、
少し多いですが、15mlのお酢を毎日摂取すれば、体脂肪や血中コレステロールに対する効果が期待できます。
(15mlのお酢に含まれている酢酸は、750mg)
しかし、はじめは少量から、自分の体に合わせて徐々に調節していくことをお勧めします。

以上のメカニズム、研究により
① 肥満予防、脂肪の減少→◎ 効果あり
②血中コレステロールの減少→◎ 効果あり
だと考えられます。

 


■ お酢は食欲を促進する?

上述してありように、お酢は食欲を促進するというインターネット記事を目にしますが、これは本当なのでしょうか?

"Nature Communications" という有名なジャーナルに、
酢酸が、脳の視床下部※2に直接的に作用して、食欲の抑制を引き起こすことが分かりました(Frost.2014)。

胃腸から分泌されるホルモンが食欲の調節に関わると考えられていましたが、
ホルモンではない酢酸が、脳の食欲調節に関わることは大きな発見でした。

※2 視床下部(弓状核)は食欲の調節に深くかかわる部位です。


また、お酢に関するレビュー(いろんな論文をまとめて考察した論文)を読んでみましたが、
「食欲促進」という言葉は見つけられませんでした(Samad.2016 , Petsiou.2014)

よって、
③食欲の促進→× (むしろ食欲を抑える)
だと考えられます。

 


 ■ まとめ

お酢に含まれている「酢酸」が肥満に効果的だと考えられます。
食欲の抑制にも効果的だと考えられます。

しかしながら、万人に当てはまるダイエット法は存在しません。
自分の体と相談しながら、少しずつ慎重に試していくことをお勧めします。

お役に立つことができましたでしょうか?
他の記事についても読んでいただけたら幸いです。

 

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Canfora EE et al.:Short-chain fatty acids in control of body weight and insulin sensitivity .NATURE REVIEWS ENDOCRINOLOGY 11:577-591,2015

Frost et al.:The short-chain fatty acid acetate reduces appetite via a central homeostatic mechanism. NATURE COMMUNICATIONS ,2014

Kondo T et al.:Vinegar Intake Reduces Body Weight, Body Fat Mass, and Serum Triglyceride Levels in Obese Japanese Subjects.BIOSCIENCE BIOTECHNOLOGY AND BIOCHEMISTRY 73:1837-1843,2009

Samad A et al.:Therapeutic effects of vinegar: a review.CURRENT OPINION IN FOOD SCIENCE 8:56-61,2016

Petsiou et al.:hanisms of action of vinegar on glucose metabolism, lipid profile, and body weight.NUTRITION REVIEWS 72:651-661,2014

Yamashita et al, Effects of Acetate on Lipid Metabolism in Muscles and Adipose Tissues of Type 2 Diabetic Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) Rats .BIOSCIENCE BIOTECHNOLOGY AND BIOCHEMISTRY 73:570-576,2009

Yamashita.:Biological Function of Acetic Acid-Improvement in Obesity and Glucose Tolerance by Acetic Acid in Type 2 Diabetic Rats. CRITICAL REVIEWS IN FOOD SCIENCE AND NUTRITION 56:S171-S175,2016.